輸出還付金が経団連加盟企業へ有利に働いているのでは?と言う話が浮上しています。
そこで、私なり改善案を考えてみました。最後までご一読いただけますと幸いです。
はじめに:輸出還付金とは何か
日本の消費税制度において、「輸出還付金」とは、輸出企業が支払った仕入れ時の消費税を、税務署から還付される仕組みのことです。これは、輸出品に国内の消費税が転嫁されることを防ぎ、国際競争力を保つために設けられている制度です。
一見、合理的に見えるこの制度ですが、実は日本経済全体や税の公平性にとって多くの問題を孕んでいます。特に、巨額の利益をあげる一部の輸出大企業が、実質的に「消費税をあまり負担していないのでは?」という状況が起きており、これが法人税の負担とのギャップを生み出しているのです。
現行制度の問題点:輸出企業だけが“優遇”されている構造
消費者が購入する商品には10%の消費税が課税されますが、輸出企業は国内では販売していないため、その分の消費税を徴収せず、仕入れにかかる消費税分のみを「輸出還付金」として受け取ります。
問題は、この還付金の額が非常に大きく、たとえばトヨタ自動車のような輸出比率の高い企業では、毎年数百億円〜1,000億円近い還付金を受け取っている点にあります。これが企業の営業利益を大きく押し上げ、結果として法人税の軽減につながっているケースが多いのです。
輸出還付金による“見えない法人税減税”
輸出還付金は税務上「収益」として扱われないため、実際の営業利益にはカウントされません。しかし、実質的には企業のキャッシュフローを改善し、法人税の納税額を相対的に減らす効果を持っています。つまり、表向きには税を支払っていても、輸出還付金によって国に戻ってきているというわけです。
これは内需型の中小企業や消費者にとっては非常に不公平な構造であり、「消費税は公平な税」という本来の理念が崩れてしまっている状態です。
提案:輸出還付金を事業利益と相殺する「利益連動型制度」
私の提案は、輸出還付金を廃止するわけではなく、「企業の事業利益と連動して相殺する仕組み」を導入することです。これにより、利益が出ている企業に対しては、社会的責任として一定の納税を求めることができます。
制度の骨子
- 年間営業利益が10億円を超える企業を対象とする
- 輸出還付金が営業利益の20%を超える場合、その超過分を法人税の課税対象とする
- 営業利益率に応じて、還付の上限率を設定する(例:20%超の利益率 → 還付上限は売上の1%)
- 利益が出ていない企業や赤字企業は、従来通り全額還付を受けられる
制度導入のメリット
- 税の公平性向上: 利益のある大企業が相応の負担を担うことで、中小企業や消費者とのバランスが取れる
- 財源の安定化: 数千億〜1兆円規模の還付金の一部を国庫に戻せる可能性がある
- 社会的信頼の向上: 「大企業ばかりが優遇されている」という不信感の払拭につながる
想定される反論とその対応
① 国際競争力の低下
確かに、輸出還付金の縮小は輸出企業のコストに影響します。しかし、制度の対象は「利益が出ている企業」のみに限定されているため、企業体力のあるところにだけ適用されます。競争力を削ぐのではなく、社会貢献を求める制度設計です。
② 二重課税の懸念
還付金を法人税の課税対象とするのではなく、「営業利益に連動する上限制」であれば、二重課税ではなく“控除の制限”という扱いになり、法理的にも整合性が取れます。
③ WTOルール違反の恐れ
WTOでは「輸出に税を課してはならない」とされていますが、本制度は「還付の上限を利益に応じて調整する」だけであり、輸出行為自体への課税ではありません。この点で、国際的にも正当性は確保されると考えられます。
今後の展望と国民的議論の必要性
日本の税制が抱える構造的な問題の一つが、この輸出還付金のあり方です。私たちは、企業の国際競争力だけでなく、国民全体の納得感・持続可能性という視点からも制度を見直す必要があります。
この提案は、あくまで一つのたたき台に過ぎませんが、「税金は誰がどれだけ負担すべきか?」という根本的な問いに、国民全体で答えるための出発点になればと願っています。
まとめ
・輸出還付金は国際競争力を支える制度だが、行き過ぎた優遇が法人税の空洞化を招いている。
・営業利益に応じた相殺制度により、税の公平性と国の財源を両立できる。
・制度の見直しには、国民的議論と透明性ある制度設計が不可欠である。
税制度は社会の土台です。時代に合った制度へと進化させるため、今こそ声をあげましょう。